第51回大河内記念生産賞
地球環境に配慮した24kV固体絶縁スイッチギヤの開発と実用化
1 開発の背景
優れた絶縁性能を有するSF6ガスを用いたガス絶縁スイッチギヤ(C‐GIS)は、小型・安全・高性能なスイッチギヤとして、我が国が、世界に先駆けて開発・普及させてきたスイッチギヤである。しかし、C‐GISは地球温暖化係数が極めて大きなSF6ガスを使用しており、近年、環境保全の立場からSF6ガスを使用しない新たなスイッチギヤへのニーズが高まった。そこで、従来よりも小型化ができる固体絶縁材料(エポキシ樹脂)を用い、しかも接点部にはSF6ガスを使用しない真空遮断器を用いたエポキシモールドタイプ遮断器の開発に着手した。
2 特徴と成果
本技術開発は、・最終的に、エポキシ樹脂に微細シリカ、球状シリカとコアシェルゴム粒子を最適に充填することで、十分な強度を持たせ、銅とエポキシ樹脂の熱膨張係数を一致させたまま粘度を低くすることに成功し、・同時に、真空スイッチの外壁セラミックスとの密着性を確保するために必要な靭性を持たせることに成功し、スイッチ部分全体を固体化(モールド化)した24kV固体絶縁スイッチギヤ(SIS)を世界に先駆けて開発することに成功した。・更に、従来12時間以上かけて型全体をゆっくり過熱し樹脂を均一に熱硬化させていたプロセスを見直し、型の先端から順番に硬化させることで歪みのないエポキシ注型品を1時間で完成させる高リサイクル注型技術(生産性が8~160倍向上)を開発し、低コストで信頼性の高い注型品の大量供給を可能にすることに成功した。
これらの成果として、小型で信頼性の高い固体絶縁スイッチギヤを低コストで作製できた。現在、東芝の24kVスイッチギヤの生産は、ほとんどがSISに移行しており、36kV用が市販開始された状況である。
3 将来展望
引き続いて、84kV用を現在開発中である。小型で製造コストも安いことから、国内メーカはもとより海外メーカの注目度も高く、製品化を予定しているレベルに該当するスイッチギヤが全て固体絶縁化されるとすると、世界中では5千億円程度のマーケットが考えられる。小型化による経済効果も大きく、銅の使用量、スイッチギヤによる電力損失も少ないことから20年間使用としてLCAによる評価ではCO2排出量は、C‐GISより62%削減、圧縮空気絶縁型よりも38%削減可能である。また、エポキシ注型技術は、スイッチギヤ以外の各種エポキシ注型品(構造・絶縁材料)にも利用されており、本開発技術の波及効果は、計り知れないものがある。