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第52回大河内記念技術賞

LCDパネル用視野角拡大フィルムの生産技術の開発

 

1 開発の背景
薄型パネルディスプレイとして期待されていた液晶ディスプレイ(以下LCDと略す)の最大の欠点は、斜め方向から見るとコントラストが急に悪くなる点にあった。本業績は、その対策として液晶セル内の複屈折を補償する目的で、液晶セルの画面に貼ることで実用上の視野角を大幅に広げることを可能としたフィルム(WVフィルム)を開発し、その量産技術を確立した研究開発である。

 

2 特徴と成果
このフィルムは、パーソナルコンピュータの表示機器として主流であるTN‐TFT (Twisted‐Nematic Thin Film Transistor)方式LCDに有効で、15インチLCDでは、このWVフィルムの使用率(シェア)は100%に近い。当該フィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、ディスコティック液晶を特定の向きに配向させ、固定したものである。製造は、素材を設備に装填するためのセッティングをした後は、全てクリーン環境下、無人で行なわれ、ほぼ100mの製造工程終了後出荷される仕組みとなっている。特徴的な技術としては、柔らかいポリマー表面の分子の向きをそろえるラビング効果の均一化と除塵、非接触で幅の広いフィルムを搬送する技術、ディスコティック液晶を均一に塗布し、むらなく乾燥させる技術、同じく均一に配向させる技術、検査技術など多くの特許技術によって支えられており「目的の光学特性を条件変更により容易に得られる」という特徴をもった製造技術である。また、このフィルムは、液晶パネル製造工程を変更せずに、視野角を改良できるため、安価なパネルが生産可能となり、パソコンモニターの液晶化が急速に進みオフィスの省エネ化・省スペース化が実現できた。

 

3 将来展望
TN‐TFT方式LCD用としては当該WVフィルムのシェアが100%であること、売り上げも年々高い率で増加していること、近い将来、現在の2倍程度までの増産は見込まれていることに加え、TV用途のLCDへの応用も開発中である。既にOCB方式LCD用WVフィルムは市販を開始している。また、大型TVで使われているVA方式、IPS方式LCDに使用可能なWVフィルムも開発中で、近々販売する予定であるなど、今後、更なる増産が期待されるLCDに、幅広く利用されるものと予想され、ますますの発展が見込まれる製品の製造技術開発である。