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第53回大河内記念生産特賞

無縫製コンピュータ横編機およびデザインシステムを活用した
ニット製品の高度生産方式の開発

 

1 開発の背景と内容
従来のニット製品は、ニット編地を裁断または成形編みの後、各部を縫い合わせて仕上げをしていたが、このニット製品は縫い目がごわつき、ニットがもつ伸縮性も損なわれてしまうという欠点があった。さらに、縫製工程は、非常に人手がかかるためリードタイムを遅らせ、加えて裁断する際に発生するカットロスなどにより、製品は高コストになっていた。これらの欠点・課題を解決するために、島精機は1995年に世界初の無縫製コンピュータ横編機を開発し、縫製作業を不要としたホールガーメント®製品を業界に提案することに成功した。

 

2 特徴と成果
開発された本生産システムを支えるコア技術の特徴を以下に述べる。
1) 4枚ベッド横編機
従来の2枚ベッド横編機から世界唯一の4枚ベッドタイプにより、2枚ベッドでは不可能であった繊細な製品が可能になった。
2) スライドニードル
約150年続いたベラ針と呼ばれる編み針を変革したスライドニードルの開発により、編み方のテクニックは36種類から144種類に増加し、デザインバリエーションが大幅に拡大し、体の線にフィットする立体表現が可能になった。
3) デジタルステッチコントロールシステム(DSCS)
この制御システムは糸の消費量を制御し、所要のサイズ、形状になるように編む装置であり、従来の縫製品では編地の約30%以上あったカットロスがホールガーメント®では皆無となった。
4) コンピュータによるデザインシステム
アパレルメーカーにホールガーメント®を普及するために開発されたデザインシステムにより、バーチャルデザインサンプルが可能となり、デザインに要する時間を大幅に短縮するとともに洋服と同等な3次元の洗練されたシルエットのサンプルが提供でき、世界のトップブランド企業をサポートし、顧客として獲得できた。
以上述べた画期的なホールガーメント®横編機のコア技術および生産・デザインシステムにより、本機械は最近3年間で2137台の販売を達成し、国内市場占有率90%、国際市場(世界市場)占有率90%を獲得した。この結果、ホールガーメント®事業はグローバル競争力を有する事業に成長した。

 

3 将来展望
本技術は、ニット製品の裁断・縫製作業を撤廃する革命をもたらし、さらに、生産コストと生産時間の大幅な短縮により、衰退しつつある日本の繊維産業の競争力回復や多品種少量生産を求める循環型社会の構築に貢献する等、産業や社会に大きなインパクトを与えるであろう。