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第55回大河内記念技術賞

ジエタノールアミン選択的製造触媒プロセスの開発

 

1 開発の背景と内容
エタノールアミン類は、年間120万トン以上生産される基礎化学品であり、従来エチレンオキシドとアンモニア水とを反応させることで製造されてきた。エタノールアミン類の中でも、ジエタノールアミンは除草剤グリホサートの原料として消費量が大きく伸びているが、上述の方法では反応中間体であるジエタノールアミンを選択的に製造することはできず、選択性の高い触媒開発が望まれていた。本業績では、高い活性と高いジエタノールアミン選択性をもつ触媒と、それを用いたプロセスの開発を達成している。

 

2 特徴と成果
本業績の要素技術は次の5つからなる:
(1) ジエタノールアミン選択性向上を目的としたナノスケール細孔をもつペンタシル型ゼオライト触媒の開発、
(2) 触媒活性向上を目的としたゼオライトの希土類元素修飾、
(3) 副生成物の低減を目的としたバインダーを用いないゼオライト成形法の開発、
(4) 触媒劣化の克服を目的とした高温・高圧アンモニアによる触媒再生法の開発、
(5) 生産性向上を目的としたアンモニア気化潜熱を利用する新規断熱型反応器の開発。
受賞者らは、先にエチレンイミン製造プロセスを開発・工業化した後に、その原料であるモノエタノールアミンを選択的に製造する基礎技術を確立していたこともあり、今回のジエタノールアミン選択的製造触媒プロセスの短期開発に繋がることとなった。本業績により生産量の大幅な増加とコスト低減が可能となり、現時点で年産5万トンを達成している。
従来からゼオライト触媒の形状選択性は知られていたが、本業績の反応のように極めて明瞭な効果が現れた例は少なく、学術的なインパクトも大きい。

 

3 将来展望
本業績の要素技術のうち、形状選択性ゼオライト触媒、ゼオライトの成形・イオン交換・再生技術、さらには断熱反応器内における相変化を用いた除熱技術は極めて応用性が高く、将来的にも大きな波及効果が期待できる。