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第56回大河内記念生産賞

回転炉床式還元炉による
製鉄ダスト類リサイクルプロセスの開発

 

1 開発の背景と内容
副産物として不可避的に発生するダスト処理は製鉄所存続そのものに関わる課題である。ダスト類は鉱石焼結機、高炉、転炉、圧延メッキ工程などから発生し、発生量は鉄1㌧あたり100kg以上、鉄分換算で5%に及ぶ。高蒸気圧の亜鉛、アルカリ、ハロゲンを含むものも多く、そのままリサイクルするとプロセス内を循環、濃縮する。従って鉄源としてリサイクルする場合は、これらを除去する必要がある。しかし従来は揮発性金属処理の高効率技術がなく、ダスト類の一部は廃棄物処分されていた。従って、亜鉛などを除去し処理エネルギーを金属鉄として有効利用できるプロセスの開発が製鉄業の重要課題であった。また、ダスト類から高炉などで使用できる成分・物性の高品位製品の製造も重要であった。
本業績は、① 原料ダストの混合成分調整、② 造粒、③ 部分還元、④ 冷却、の各工程を回転炉床タイプの還元炉を用いて連続操業化したものである。
回転炉は過熱帯、還元帯、排出ゾーンにわかれ、最高温度1400℃で、炭材内装ペレットから70~85%の還元鉄を製造し、高炉鉄源とする。亜鉛、アルカリ、ハロゲンなどは蒸発・分離回収し、亜鉛源などとして外販することが可能となった。これにより新日鐵で発生する製鉄ダストを完全にリサイクルする体制を完成させた。

 

2 特徴と成果
本業績の達成までにはいくつかのターニングポイントがあった。
(1) 還元・亜鉛分離に対する炉内温度の適正化などの技術により、酸化鉄還元と揮発性金属分離が同時にできる。
(2) 不純物が多く成分・物性が不安定なダスト類を原料として、製品である還元鉄を製鉄設備で使用できる品位まで処理する技術は他に例を見ない。
(3) 特にスラッジ脱水、造粒・成形処理では、新型高性能脱水機の新たな技術を開発して連続処理を可能とした。
(4) また、低融点酸化鉄の炉床付着対策や耐アルカリ耐火物開発などの安定操業技術は、他の直接還元法などにおける長年の課題を解決するものである。
(5) さらに、アルカリ・亜鉛の多い排ガス処理での付着防止技術は独自性の高い技術で、排熱回収による熱効率も高めており、他の廃棄物処理に展開できる研究成果でもある。

 

3 将来展望
本業績は、大量の製鉄ダストの処理を最も経済的にかつ安定して実施できるプロセスであり、省資源・省エネルギーの重要技術として国内外での活用が期待できる。既に国内・海外の社外に5基の技術供与実績がある。また、製鉄ダストと広域集中処理でのリサイクル鉄源の新しい環境事業形態への展開も期待できる。