お問い合わせ

第63回大河内記念生産賞

有機ELディスプレイ絶縁膜用ポジ型感光性ポリイミドの開発

 

1 開発の背景と内容
有機EL(OLED)ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して薄型・軽量・フレキシブルであり、原理的に低消費電力化が可能で表示応答性にも優れるなどの特徴があり、スマートフォンやタブレット端末のようなモバイル情報端末に導入され、最近では大画面テレビにも搭載されるようになってきた。有機ELディスプレイでは、画素間の分離やTFT基板平坦化に絶縁膜が重要な役割を果たす。この絶縁膜材料として高解像度・高感度の感光材料が必要とされ、その材料にはさらに低アウトガス性、適切な粘度制御や耐薬品性などが要求される。本業績は、これらの諸条件を満たしてフラットパネル生産プロセスに適合する材料を開発し、その大量生産を可能とした技術に関するものである。

 

2 特徴と成果
東レ(株)は同社の感光性ポリイミド技術を基礎に、上記の諸特性を有する絶縁膜材料の開発に取り組んだ。その結果、ポリイミド前駆体の部分エステル化制御によって溶解速度を最適化することに成功し、ナフトキノンジアジド感光剤と組み合わせたポジ型感光性ポリイミドの工業化を実現した。簡便で制御性に優れた重合・部分エステル化・再沈・感光材添加の連続プロセスが低コストでの大量生産を可能としている。市場の拡大と要求性能の高度化に対応して、スリットコーティングへの対応や耐薬品性付与、高感度化を継続して成し遂げ、同社のポジ型感光性ポリイミドは有機ELディスプレイパネル用絶縁膜材料として市場占有率ほぼ100 %のデファクトスタンダードとしての地位を確立した。

 

3 将来展望
本業績は有機ELディスプレイの実用化と生産性向上・高機能化に資するものであり、その意義は極めて大きい。有機ELディスプレイパネル市場は年率25%の成長が見込まれており、今後も同社の絶縁膜材料が増大する需要に対応していくものと思われる。また、有機ELディスプレイはフレキシブルであるという利点をいかして、折り曲げ可能な携帯端末や車載用ディスプレイ、高装飾性デジタルサイネージなど、多彩な展開が予想される。本業績は、こうした技術発展と新市場開拓に継続して貢献していくものと期待される。