第64回大河内記念生産特賞
省資源・環境調和型・高生産性ステンレス製鋼プロセスの開発
1 開発の背景と内容
ステンレス鋼の製造工程においてクロム歩留まりを向上し、クロム酸化物を系外に排出しないことは生産性の向上とコストダウンに大きな効果があると共に環境負荷を低減する。従来は電気炉溶解、クロム添加、真空脱炭法が一般的であるが、該社では安価鉄源を利用するために高炉から鉄源を転炉に装入し、スクラップ溶解を同時に行い、酸化脱炭を行っていた。 この方法では強い還元工程はなく、一度酸化したクロムを回収するためには高価なフェロシリコンを利用せざるを得ずプロセスコストが嵩む。そのため、クロム含有スクラップの利用には限界があるとともに、必然的に発生するクロム含有酸化物の処理は出来なかった。そこで、安価クロム源を大量に使用でき、クロムの系外排出ロスを下げ、生産性を向上し、コストが下がる方法を探査した。
2 特徴と成果
提案されたプロセスは、コスト的に有利な高炉、転炉、真空脱炭炉、連続鋳造にさらに、YES(Yawata Environment-friendly Smelter)と名付けた電気炉を付加している。炉底からアルゴンガス等を吹き込み、装入物の溶解と反応を促進することができる、スクラップ溶解のための還元雰囲気の電気炉である。この炉が存在するために、クロムを含有するスクラップを大量に溶解することができるようになり、同時に該電気炉において製鋼炉で発生する含クロムダストやスラグをほぼ完全に処理することが出来、系外に排出するクロムを十分の一以下にすることに成功している。環境面だけで無く、クロム歩留まりなど生産性の向上とコストの大幅削減におおきな効果が出ている。
3 将来展望
クロムの酸化ロスの縮減とクロム含有スラグの大量処理を可能とするこのプロセスは生産性向上、コスト削減、環境負荷低減ができるプロセスであり、今後該社内で展開していく予定である。