お問い合わせ

第71回大河内記念技術賞

高強度配向骨の誘導による積層造形整形外科デバイスの付加価値向上と製品化
帝人ナカシマメディカル株式会社 高橋 広幸 他4名

 

1 開発の背景と内容
社会の高齢化に伴い,変形性関節症や骨折などの運動疾患に対する治療用具としてインプラント等の整形外科用医療デバイスの需要が増大しているが,このようなデバイスには骨/デバイスインターフェイス部の固定性の向上をはじめとする課題があった.これらの対策として,従来,金属の付加製造(3Dプリンティング)によって固定性を向上する多孔質層を骨/デバイスのインターフェイス部に直接創成する試みが欧州を中心に行われ実用化されてきた.当該事業者は,この製造方法を国内事業者としては先行的に採用するとともに,新規なインターフェイスデザインを開発し,それを採用したデバイスを製品化した.

 

2 特徴と成果
当該事業者が開発したHoneycomb Tree Structure(以下HTS)は,骨/デバイスの固定性・骨の成長を飛躍的に促進するインターフェイスデザインで,当該デバイスの付加価値を大きく向上した.その成果として,当該事業者は2021年6.5億円,2022年12.0億円, 2023年15.6億円を売り上げており,合計33億円売り上げと約2.5倍の成長を達成した.さらに,HTSは付加製造以外の工法では加工できない新規な構造であり,これを用いてあらたな価値を生み出したことは,当該事業者が従来工法を本工法に単に置き換えただけではなく,本工法を巧みに使いこなした証左である.

 

3 将来展望
製造業の国際化が進み製品価値の陳腐化が加速する中,単に海外の事業をまねて国内に導入しただけでは,苦労が多い割には「うまみ」が少ない.本業績は,あらたなデザインを導入することで,製品の価値を確たるものとして事業を拡大しており,この価値は今後,海外に事業展開すれば世界市場の席巻も十分期待できる.また,整形外科用デバイスの付加製造によるビスポーク生産は,従来から期待されており,今後,当該事業者がトップランナーとなることが期待できる.さらに本業績の価値は,一事業者の利益にとどまらず,高齢者やしょうがい者のQOLの向上という社会的な意義が大きく,社会の高齢化の先頭を走る我が国発の技術として本邦のブランド力の向上に貢献することができる.